第5回(前編)「知っておきたい、がんとの向き合い方―がんと診断されてまず何をすればいいの?」座談会レポート
2026/7/27

出演者は、左から司会・進行:川上祥子(がん情報サイト「オンコロ」)、患者・家族:轟浩美さん(一般社団法人igannet 代表理事・全国がん患者団体連合会 事務局長)、看護師:樋口麻衣子さん(富山大学附属病院 看護部 がん看護専門看護師)、医療ソーシャルワーカー:坂本はと恵さん(国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター 副センター長)、医師:山本信之先生(和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科) 教授)
【はじめに】
「がんです。」
その一言を聞いた瞬間、多くの人は頭が真っ白になります。医師から説明を受けても内容が頭に入らず、「何を聞けばいいのか分からない」「これからどうすればいいのだろう」と、不安を抱える方は少なくありません。
今回は、患者・患者家族、看護師、医療ソーシャルワーカー、医師という、それぞれ異なる立場から、「がんと診断されたとき、まず知っておきたいこと」について語り合いました。この座談会を通して繰り返し語られたのは、「一人で抱え込まなくていい」というメッセージです。
【がんと診断されたとき、どうしたらよいのでしょうか?】
患者会代表であり、ご自身もがん治療を経験している轟浩美さんは、ご主人ががんと診断された当時を振り返ります。
当時は、「がんなら手術をすれば治る」というイメージを持っていました。しかし、実際には手術が難しい状態であることを告げられ、その現実との違いに戸惑い、何を考えればよいのか分からなくなったと話します。
その後、ご自身が胆のうがんと診断された際には、患者会活動を通じて医療の知識や医療者との関わりを重ねてきた経験がありました。そのため、病状は決して軽くありませんでしたが、医療者の説明を理解しながら、治療について考えることができたと語りました。
また、医師の山本信之先生は、「告知直後に混乱するのは自然な反応です」と話します。患者さんがすぐに説明を理解できないことは医療者も理解しているため、「もう一度説明してほしい」「今日は整理できません」と伝えても問題ないと説明しました。
さらに、がん治療は多くの場合、心筋梗塞や脳卒中のように一刻を争う病気とは異なり、説明を受けながら理解を深め、納得して治療を考えていく時間があることも紹介しました。
また、ご家族と一緒に診察を受けることも勧めています。患者さん一人では聞き漏らしてしまうことも、ご家族と一緒であれば後から確認し合うことができます。
看護師の樋口麻衣子さんは、診察後の患者さんとの関わりについて紹介しました。診察室では「分かりました」と答えていても、実際には理解できていなかったり、不安を十分に話せていなかったりする患者さんは少なくありません。そのため、診察後に改めて話を聞き、不安や疑問を整理する時間を大切にしているそうです。
また、がん相談支援センターで相談を受ける坂本はと恵さんも、「先生の説明が途中から分からなくなってしまった」という相談は少なくないと紹介しました。そのような場合には、医師や看護師につなぎ、患者さんが納得できるまで説明を受けられるよう支援していると話しました。
【先生に質問していいのですか?遠慮してしまいます…】
診断後、多くの患者さんが感じるもう一つの悩みがあります。それは、「先生に質問してもいいのだろうか」という遠慮です。
轟さんは、ご自身も医療者から「エビデンス」という言葉を聞いた際、その意味が分からなかった経験を紹介しました。しかし、「分かりません」と言うことに遠慮があり、その場で聞き返すことができなかったと振り返ります。
こうした経験は患者会にも多く寄せられているそうです。「忙しそうだから聞けない」「先生を困らせたくない」と感じる患者さんは少なくありません。
一方、山本先生は、セカンドオピニオンは患者さんの権利として広く認められているものであり、主治医を疑うことではないと説明しました。患者さんが納得して治療を受けるための大切な選択肢の一つであると話します。
また、「患者さんから質問してもらえる方がありがたい」とも語りました。患者さんが何を不安に思い、どのようなことを大切にしたいのかが分かることで、一緒に治療について考えやすくなるからです。
診察室で質問できなかった場合には、看護師やがん相談支援センターを利用してほしいと呼びかけました。
坂本さんは、がん相談支援センターは患者さん本人だけでなく、ご家族や匿名でも利用できる相談窓口であることを紹介しました。相談できる内容は、治療だけではなく、生活や仕事、お金のことなど幅広く、「こんなことを相談してもいいのかな」と思う内容でも相談してほしいと話します。
また、樋口さんは、医療者にはそれぞれ役割があることを紹介しました。治療については医師へ、療養生活については看護師へ、制度や生活上の困りごとについては医療ソーシャルワーカーへ相談するなど、それぞれの専門性を活用してほしいと話しました。
【「一人で抱え込まない」が、最初の一歩】
がんと診断された直後は、不安や戸惑いでいっぱいになるものです。
今回の座談会では、すべての出演者が共通して「一人で抱え込まなくていい」というメッセージを伝えていました。
分からないことは、そのままにせず質問すること。困ったときには、医師だけでなく、看護師や医療ソーシャルワーカー、がん相談支援センターなど、さまざまな専門職を頼ること。そして、ご家族や周囲の人と一緒に治療について考えていくことが大切です。
本記事では紹介しきれなかった体験談や具体的なエピソードも数多く語られています。ぜひ動画本編もご覧いただき、「一人で抱え込まなくていい」というメッセージを感じていただければ幸いです。
<出演者>
・轟 浩美さん(患者・家族:一般社団法人igannet 代表理事・全国がん患者団体連合会 事務局長)
・樋口 麻衣子さん(看護師:富山大学附属病院 看護部 がん看護専門看護師)
・坂本 はと恵さん(医療ソーシャルワーカー:国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター 副センター長)
・山本 信之先生(医師:和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科) 教授)
・川上 祥子(司会・進行:がん情報サイト「オンコロ」)
※この座談会の様子を動画でご覧になる方はオンコロYouTube公式アカウントでご覧下さい。
動画はこちら:第5回テーマ「がんと診断されて、まず何をすればいいの?(前編)」