第5回(後編)「知っておきたい、がんとの向き合い方 ~がんと診断されたとき、まず何を知り、誰と話せばいいのか~」座談会レポート

出演者は、左から司会・進行:川上祥子(がん情報サイト「オンコロ」)、患者・家族:轟浩美さん(一般社団法人igannet 代表理事・全国がん患者団体連合会 事務局長)、看護師:樋口麻衣子さん(富山大学附属病院 看護部 がん看護専門看護師)、医療ソーシャルワーカー:坂本はと恵さん(国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター 副センター長)、医師:山本信之先生(和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科) 教授)

【はじめに】

がんと診断されると、患者さん本人だけでなく、ご家族もさまざまな不安や戸惑いを抱えます。

また、治療が始まると、「家族としてどのように支えればよいのか」「治療についてどこまで理解しておけばよいのか」と悩む方も少なくありません。

今回は、患者さんとご家族が一緒に治療と向き合うために大切なこと、そして納得して治療を選択するための考え方について、それぞれの立場から語り合いました。

【家族への伝え方/家族としてできること】

轟浩美さんは、ご主人ががんと診断された当時を振り返り、「治るためには何をすればいいのか」と考え、さまざまな情報を探し続けていたと話します。しかし、そのことが、結果として患者さん本人にプレッシャーを与えてしまっていたのではないかと、今になって感じるそうです。

その経験から、家族も治療の目的や現在の状況を正しく理解することが大切だと語りました。患者さんだけが医療者の説明を受けるのではなく、できる限り家族も一緒に説明を聞き、同じ理解を持つことが、患者さんを支える上で大きな力になると話しています。

樋口麻衣子さんは、家族の形はそれぞれであり、患者さんにすべてを話す方もいれば、心配をかけたくないという思いから一人で抱え込む方もいると紹介しました。

また、家族も大切な人の病気を前に、不安や喪失感を抱えている存在です。そのため、家族自身が相談できる環境や気持ちを受け止めてもらう場が必要であり、看護師やがん相談支援センターへとつなぐことも大切であるとお伝えしました。

坂本はと恵さんは、がん相談支援センターは患者さんだけでなく、ご家族だけでも利用できることを紹介しました。予約不要で利用できる施設も多く、治療の日でなくても相談できるため、不安なことがあれば遠慮なく利用してほしいと呼びかけています。

山本信之先生は、高齢の患者さんにとって、ご家族は本人の価値観や生き方を最も理解している存在であることが多いと説明しました。できるだけ診察や病状説明に同席し、一緒に考えることを勧めています。どうしても同席が難しい場合には、病院に相談した上で説明を録音し、ご家族と共有する方法も提案しました。

また、坂本さんは、ご家族が近くにいない場合でも、介護保険による訪問看護や生活支援などを利用できる場合があると説明しました。一方で、治療方針を考える場面では、ご家族と一緒に話し合える機会を持つことが望ましいと話しました。

【治療の話、どこまで理解できていますか?】

山本先生は、近年のがん治療は大きく進歩し、選択肢も増えてきた一方で、内容は以前より複雑になっていると説明します。そのため医療者は、患者さんが混乱しないよう、理解できる範囲で必要な情報を伝えることを心掛けているそうです。

また、治療を選ぶ際には、治療効果だけではなく、副作用や生活への影響、通院方法、医療費なども含めて考える必要があります。そのため、患者さん自身が何を大切にしたいのかを踏まえながら、一緒に治療方針を考えていくことが重要だと話しました。

轟さんは、ご主人の治療を経験したことで、標準治療や診療ガイドラインについて理解を深め、それがご自身の治療を受ける際にも役立ったと語ります。「他の病院へ行けばもっと違う治療があるのでは」と必要以上に迷うことなく、落ち着いて治療を受け止めることができたそうです。

一方で、治療の名称や薬の名前など、分からないことはあったと振り返ります。その際には、「この治療をすると生活はどう変わりますか」「副作用はどのようなものがありますか」と、自分の生活に関わることを医師へ質問したと話しました。

また、「治療のために生きるのではなく、生きるために治療する」という考え方に気付いたことで、生活への影響についても遠慮なく質問できるようになったと語っています。

樋口さんは、診察室では反射的に「はい」と答えてしまう患者さんが少なくないため、診察後に患者さん自身の言葉で説明内容を話してもらい、理解できていない部分を補足していると紹介しました。必要に応じて医師へ再度説明を依頼することも、看護師の大切な役割だと話しました。

【「一人で抱え込まない」が、患者さんと家族を支える第一歩】

今回の座談会では、患者さんだけでなく、ご家族も一人で抱え込まないことの大切さが繰り返し語られました。

患者さんもご家族も、不安や疑問があれば医師だけでなく、看護師や医療ソーシャルワーカー、がん相談支援センターなど、多くの専門職へ相談することができます。

また、ご家族も患者さんを支える立場として一人で頑張る必要はありません。周囲の支援を受けながら、一緒に治療について考えていくことが、患者さんにとっても安心につながります。

最後に出演者からは、「分からないことや不安なことは口に出してほしい」「困ったときには相談できる人が病院にはいる」というメッセージが送られました。

本記事では紹介しきれなかった体験談や具体的なエピソードも数多く語られています。ぜひ動画本編もご覧いただき、患者さんとご家族が一緒に治療と向き合うためのヒントを感じていただければ幸いです。

<出演者>

轟 浩美さん(患者・家族:一般社団法人igannet 代表理事・全国がん患者団体連合会 事務局長)
胆道がん患者・胃がん遺族としての経験を活かし、患者会代表として医療者との協働を大切にしながら、患者・家族の支援活動を続けています。

樋口 麻衣子さん(看護師:富山大学附属病院 看護部 がん看護専門看護師)
がん看護専門看護師として患者に寄り添う看護を実践し、自身の甲状腺がんの経験も生かしながら、AYA世代を含むがん患者支援に取り組んでいます。

坂本 はと恵さん(医療ソーシャルワーカー:国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター 副センター長)
 医療ソーシャルワーカー(MSW)として患者・家族の相談支援に携わり、就労支援やAYA世代を含むがん患者支援に取り組んでいます。 MSWとしての講演活動も多数。

山本 信之先生(医師:和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科) 教授)
肺がん薬物療法と臨床試験を長年牽引し、患者中心のがん医療の発展に尽力してきた呼吸器腫瘍内科医です。日本肺癌学会、西日本がん研究機構、日本がんサポーティブケア学会、理事長。

川上 祥子(司会・進行:がん情報サイト「オンコロ」)

※この座談会の様子を動画でご覧になる方はオンコロYouTube公式アカウントでご覧下さい。

動画はこちら:第5回テーマ「がんと診断されて、まず何をすればいいの?(後編)」