第6回「自分らしい治療の選び方と、周りとの話し合い」座談会レポート
2026/7/29

出演者は、左から司会・進行:川上祥子(がん情報サイト「オンコロ」)、患者・家族:轟浩美さん(一般社団法人igannet 代表理事・全国がん患者団体連合会 事務局長)、看護師:樋口麻衣子さん(富山大学附属病院 看護部 がん看護専門看護師)、医療ソーシャルワーカー:坂本はと恵さん(国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター 副センター長)、医師:山本信之先生(和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科) 教授)
【はじめに】
がん治療では、医師から治療法の説明を受けたあと、「どの治療を選ぶか」を考える場面があります。しかし、「先生に任せた方がいいのでは」「自分の希望や気持ちを伝えてもいいのだろうか」と迷う方も少なくありません。
今回は、患者さんやご家族が医療者と一緒に治療を考えるために、日々の生活の中で感じていることや、大切にしたいことをどのように伝えていけばよいのか、それぞれの立場から語り合いました。
【治療を「先生に任せる」から「先生と一緒に決める」へ】
患者会代表であり、ご自身もがん治療を経験している轟浩美さんは、ご主人が抗がん剤治療を受けていた際の出来事を紹介しました。
ご主人は手足の荒れに悩んでいましたが、「副作用だから仕方がない」と思い込み、医療者には伝えていませんでした。しかし、通りがかった看護師から「生活の中で起きていることも医療者にとって大切な情報です」と声を掛けられたことが、大きな転機になったといいます。
それ以来、日常生活で困っていることや仕事、家事などへの影響を具体的に伝えるようになり、医療者との対話が大きく変わったと振り返りました。
山本信之先生も、生活の中で困っていることを伝えてもらうことは、治療方針を考える上で非常に重要だと説明します。例えば、副作用によって生活に支障が出ている場合には、薬を変更する、休薬する、量を調整するなど、いくつかの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを踏まえながら、患者さんの希望と折り合いをつけて治療を考えていくためにも、患者さんの思いや生活の様子を知ることが大切だと話しました。
【「自分らしく生きる」ために、何を大切にするかを考える】
轟さんは、ご主人の治療中、「何か自分にできることはないか」という思いから、インターネットで情報を集め、食事療法などにも取り組んだ経験を紹介しました。
しかし、その内容を医療者へ相談しないまま続けたことで、治療に影響が出てしまったこともあったと振り返ります。今では、「もっと早く相談していれば違ったかもしれない」と感じており、気になることや取り組みたいことは、一人で判断せず医療者へ相談することの大切さを伝えました。
山本先生は、最近ではインターネットだけでなく、生成AIなどを利用して情報を集める方も増えていると紹介します。そのような情報も、そのまま実践するのではなく、「このような情報を見つけたのですが、どう思いますか」と医療者へ相談してほしいと話しました。
また、樋口麻衣子さんは、不安な気持ちからさまざまな情報にたどり着く患者さんも少なくないと説明します。そのため、「なぜその情報を信じようと思ったのか」「どのような不安があるのか」を丁寧に聞き、一人ひとりの気持ちに寄り添いながら支援することを大切にしていると話しました。
【家族との話し合い、どうすればうまくいく?】
坂本はと恵さんは、がん相談支援センターでも、民間療法や健康食品などについて相談を受けることが少なくないと紹介しました。
その際には、治療への影響について医師と一緒に整理することはもちろんですが、「なぜその情報を探したのか」「どのような思いでその方法を選ぼうとしたのか」という患者さんやご家族の気持ちも大切にしていると話します。
また、家族も「患者さんのために何かしたい」という思いから情報を集めることがあります。しかし、その思いが患者さんとのすれ違いにつながることもあります。
だからこそ、患者さん本人だけでなく、ご家族も一緒に医療者へ相談し、それぞれの思いや不安を共有しながら話し合うことが、自分たちらしい治療につながる大切な一歩になることが紹介されました。
【一緒に決める、その先へ】
最後に山本先生は、「自分らしい治療」を選ぶためには、まず自分自身が何を大切にしたいのかを考えることが大切だと話しました。
治療を始める時点ですべてを決め切る必要はありません。一度選んだ治療も、実際に受けてみて感じたことや生活の変化に応じて見直すことができます。
そのため、自分の気持ちや価値観を医療者へ伝え、治療を続けながら一緒に考えていくことが大切です。
今回の座談会では、「先生に任せる」のではなく、「先生と一緒に決める」、そして治療が始まった後も一緒に考え続けることの大切さが繰り返し語られました。
本記事では紹介しきれなかった体験談や具体的なエピソードも数多く語られています。ぜひ動画本編もご覧いただき、ご自身やご家族にとって大切なことを医療者と共有しながら、自分らしい治療について考えるきっかけにしていただければ幸いです。
<出演者>
轟 浩美さん(患者・家族:一般社団法人igannet 代表理事・全国がん患者団体連合会 事務局長)
胆道がん患者・胃がん遺族としての経験を活かし、患者会代表として医療者との協働を大切にしながら、患者・家族の支援活動を続けています。
樋口 麻衣子さん(看護師:富山大学附属病院 看護部 がん看護専門看護師)
がん看護専門看護師として患者に寄り添う看護を実践し、自身の甲状腺がんの経験も生かしながら、AYA世代を含むがん患者支援に取り組んでいます。
坂本 はと恵さん(医療ソーシャルワーカー:国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター 副センター長)
医療ソーシャルワーカー(MSW)として患者・家族の相談支援に携わり、就労支援やAYA世代を含むがん患者支援に取り組んでいます。 MSWとしての講演活動も多数。
山本 信之先生(医師:和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科) 教授)
肺がん薬物療法と臨床試験を長年牽引し、患者中心のがん医療の発展に尽力してきた呼吸器腫瘍内科医です。日本肺癌学会、西日本がん研究機構、日本がんサポーティブケア学会、理事長。
川上 祥子(司会・進行:がん情報サイト「オンコロ」)
※この座談会の様子を動画でご覧になる方はオンコロYouTube公式アカウントでご覧
動画はこちら:第6回テーマ「自分らしい治療の選び方と、周りとの話し合い」